いぼ痔とは
「いぼ痔」は「痔核」とも言われ、痔の約6割は「いぼ痔」とされています。いぼ痔には「内痔核」「外痔核」と分類され、痔を発症する箇所によって名前が変わります。
内痔核とは
痔の中でも内痔核は発症数が多く、内痔核は肛門の内側にできるものです。内痔核とは、肛門の上皮出口の約2cm奥に存在する肛門上皮と直腸粘膜の境界部分、歯状線上部にある静脈叢(じょうみゃくそう)が排便時に過度な負荷がかかることでうっ血していぼのように腫れあがる状態です。いぼ痔は知覚神経がないため、いぼが腫れあがっていても痛みを感じないことが多いです。肛門からの出血や内痔核が肛門より脱肛することで、症状に気づく方がいます。
内痔核の原因
普段の姿勢やトイレの所要時間、排便時に強くいきむ、便秘がち、下痢をしがち、女性の場合には妊娠・出産が影響して内痔核を発症します。排便時に硬い便を出そうと強くいきむことや、便秘で勢いよく便を出すことで肛門に負担がかかることも、内痔核を発症しやすくする原因です。
内痔核の症状
発症数が多い内痔核は、肛門の内側にできることが特徴です。肛門上皮出口より2cm程度奥にある肛門上皮と直腸粘膜の境に歯状線が存在し、静脈が網目状に分かれた静脈叢が排便時の過度な負荷によってうっ血してしまい、内痔核がいぼのように腫れあがります。肛門の内側には、知覚神経がないためいぼ痔があっても内痔核が脱肛してから痛みを感じる方が多い傾向にあります。痔核が軽度であれば肛門の外に飛び出す程度で済むため、押し戻せば肛門内に戻ります。しかし、悪化・進行することで痔核が肛門の外に飛び出したままになった場合は手術を受ける必要があります。内痔核には1~4段階で症状の分類がされています。
分類1
内痔核の初期段階であり、痔核は肛門内に収まっています。稀に排便時に出血を起こすことがありますが、外に飛び出すことなく痛みがないため、自覚症状がない場合もあります。
分類2
痔核を押し戻さなくても痔核が飛び出しても自然と戻りますが、排便時に出血を伴うこと、あるいは痔核が飛び出すことがあります。この段階で医療機関を受診することをお勧めします。
分類3
肛門の外に痔核が飛び出した場合、自然に戻ることができないため、自ら押し戻す必要があります。分類3まで進行して悪化・進行すると、手術を受ける必要があります。
分類4
肛門の外に飛び出した痔核は自ら押し戻しても元に戻ることがありません。出血だけでなく痛みや粘液の滲出、痒み、不快感を伴うようになります。この段階になると深刻な病状のため、手術を必ず受ける必要があります。
内痔核かん頓
内痔核が肛門から脱出し、肛門括約筋によって締め付けられることで腫れあがって元に戻らなくなる状態を内痔核かん頓といいます。肛門に強い痛みや分泌液の滲出、出血を伴い、便秘や下痢をしている時にアルコールを過剰摂取することが原因で発症します。麻酔をして肛門括約筋の締め付けを緩和しながら、元に戻らなくなった内痔核を肛門内に押し戻します。
外痔核とは
いぼ痔の一種であり、肛門の外側にいぼができるものを外痔核といいます。歯状線の下にある皮膚の静脈叢がうっ血することでいぼが腫れあがる状態です。
外痔核の原因
外痔核は他の痔と原因は変わらず、日常での姿勢やトイレの所要時間、排便時のいきむ時間、下痢がちあるいは便秘がち、アルコールの過剰摂取、刺激物の過剰摂取、ストレス、冷え、血行不良、女性の場合は妊娠・出産などの様々な問題が原因となって発生します。
外痔核の症状
肛門の外側は知覚神経が通っており外痔核は外側の皮膚にできるので、内痔核と異なり強い痛みを伴います。痛みと炎症が起こり、血栓ができることで痛みや腫れが増すこともあります。
妊婦の患者様へ
妊娠中は、ホルモンバランスが変化するため、痔を発症しやすくなります。また、妊娠前より痔にお悩みの場合は、症状が悪化することもあります。羞恥心から受診を控えてしまいがちですが、悪化する前に相談いただくことをお勧めします。
いぼ痔の治療方法
薬物治療
進行度合いによって治療法は異なり、軽度の場合は内服薬や外用薬を使用して治療を行います。進行して痛みが強い場合の治療には、手術が必要となります。
手術治療
ジオン注射(ALTA療法)
内痔核治療では、ジオン注射(ALTA療法)が一般的であり、症状によっては痛みを伴わずに治療が可能です。また、外来治療の一環として日帰りにて行える治療になります。この治療法は、注射を使って切開せずに処置し、手術後は一定期間の経過観察を要します。内痔核と外痔核をどちらも発症している場合は、ジオン注射と痔核結紮術を併せて行います。ジオン注射による治療を要すると判断した場合には、施行可能な医療機関をご紹介させていただきます。
痔核結紮術
内痔核・外痔核のいずれに対しても治療ができる手術方法であり、日帰り手術・入院手術を選択することが可能です。痔核結紮術は痔核を完全に取り除くため、痔を完全に取り除く場合に有効です。痔核結紮術を要すると判断した場合には、連携する高度医療機関をご紹介させていただきます。