便の色とは
食べた物が消化・吸収され、消化管から分泌された胆汁が混ざったものが便となります。便の色は茶色~黄土色が正常であり、場合によっては胆汁の緑色が入っていることもあります。通常の色味でない便には、黒っぽい便や赤い便、白い便があり、黒っぽい便は消化管のどこからか出血して血液が混ざった便で、肛門より遠い場所からの出血が起きた場合に出ます。一方、赤い便は、肛門付近で出血した際に出た便となります。なお、子供の場合は、感染性胃腸炎や切れ痔、腸重積などが原因として考えられます。
健康な便の色
一般的に健康な便といわれているものは、下記の通りです。
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- 茶色~黄土色である
- バナナ型である
- 強くいきまなくても便が出る
- 1日に排便が1~3回程ある
便は約80%が水分であり、残りの約20%は食べた物のかす・腸内細菌・剥がれ落ちた腸内粘膜となります。
便の色と病気のサイン
真っ赤な便(血便)
肛門付近に疾患がある可能性があります。痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)、大腸がん、直腸がん、潰瘍性大腸炎、大腸憩室、虚血性大腸炎、出血性大腸炎が主な疾患として挙げられ、発熱や腹痛を伴うこともあります。血便の場合、痔核からの出血と判断される方が多いですが、痔核の他にS状結腸がんや直腸がんを発症していたケースもあります。大腸に慢性的な炎症が見られる潰瘍性大腸炎は、近年20代の若者に増加している病気です。病気の原因が解明されておらず、厚生労働省の指定難病となっており、原因究明や新しい治療法の開発が進められているところです。症状として、粘液混じりの血性下痢やいちごジャムのような便が慢性的に続くこともあれば、自然に改善する場合や悪化することもあります。
黒い便(タール便、海苔のような黒い便)
黒い便が出る主な病気には、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、十二指腸がん、食道がんがあります。胃や小腸など、肛門から離れた箇所からの出血がある場合は血液が腸内細菌によって分解され、タールのような黒い便に変化します。ただし、出血量が多い場合は血液が消化管運動をよくするため、血液がそのまま出ることもあります。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の場合、みぞおちの痛みがなくても黒い便によって診断されることもあります。
白っぽい便
正常な便(黄褐色~茶褐色)は、胆汁の成分であるビリルビンによるもので、胆汁は肝臓で生成された後に十二指腸に流れていきます。しかし、通り道となる胆管が滞留することで胆汁を作る肝臓の働きが悪くなり、便が白っぽくなります。白っぽい便が出る病気には、胆のうがんや胆管がん、肝炎(ウイルス性・アルコール性・自己免疫性・薬剤性)・胆石(胆管に落ちて滞留した場合)があります。生後6カ月~2歳くらいの子供の場合、ロタウイルスによる胃腸炎(白色便性下痢症)を発症すると白っぽい下痢を出すことがあります。大人も感染することがありますが、ほとんどが軽症で済みます。
黄色の便
健康な便は、黄色~茶褐色をしています。しかし、黄色で水状の便は重度の下痢であり、油も浮いている場合は膵臓疾患が潜んでいる可能性があります。牛乳の飲み過ぎや下剤を服用したとき、脂肪便が出る時にも見られます。膵臓疾患は早期発見が難しいことが特徴です。何か異常を感じた場合には早めにご相談ください。
緑の便
暴飲暴食や胃腸炎などで腸が弱っていると、便に含まれる胆汁の成分であるビリルビンが増えます。このビリルビンは空気に触れることで酸化して緑色になり、便を緑色にする特徴があります。緑色の便は母乳やミルクを飲む赤ちゃんの便にもよく見られます。ミルクに含まれる乳糖が乳酸菌を作り出し、便が酸性になります。また、緑色野菜に多く含まれるクロロフィルをよく食べる方や、葉緑素含有のクロロフィル配合剤(消化潰瘍治療剤)を服用している方も薬の影響で便の色が緑色になります。